付き合い始めてすぐ手を繋いだ。
一昨日も昨日も 手を繋いだ。
今日も手を繋ぐ。
天根君とさんの関係は そんな感じ。です。


HOLD HANDS WIHT ME! CALL MY NAME!
LOVE ME TENDER!



雰囲気で惚れたのかもしれない。には胸を張って天根ヒカルの何処が好きだと言える自信がなかった。 初めて彼の存在を知った時、理由もなく凝視してしまった。外見なんだろうか。よくわからなかったが、気がつけばそれからずっと目で追っていた。 占いの恋愛運が良かったら、彼と何かが起こってくれるといいなと思った。

テニスをやっていると聞いた。はテニスのルールをよく知らない。もちろん、テニスをしない。 部活中の天根を見て、テニスのユニフォームが良く似合ってるなと思った。六角のユニフォームは赤。彼の好きな色も赤らしい。 好きな食べ物もイチゴチョコパフェ(スーパーデラックスらしい)、アポロを鞄にいれてたりして天根はイチゴとチョコの組み合わせが好きなんだ、なんか可愛いなと笑った。 イチゴの色も赤だ!

友達は理解に苦しむと言った。六角中テニス部には優しくて顔良し・頭良しの佐伯(先輩)もいるし、天根と一緒にダブルスを組んでいる黒羽(先輩)の方が男らしくて良いとか。 他の部活にだって格好良い人はいる。天根は嫌われてこそいないが好かれてもいなかった。よく寒いダジャレを言う所から『変わった奴』とも言われていた。 でもは、そんな所も好きになった。なんて魅力的なんだろう。彼のノリがわからないと言う女の子達に、それでいい、わからなくていいと幾度となく思った。は、どんなにくだらないことでも天根のことをひとつ知る度に知る前よりもっと好きになったような気がした。―――どんどん気持ちが強くなっていくような、そんな錯覚。

彼の好みのタイプが自分のダジャレに笑ってくれる子だと知った時、は自分は当てはまると思って心が躍った。その反面、そんな情報が流れてくるということは、天根のことを好きな女の子がいるんじゃないかと不安にもなった。 友達に言うと、笑われた。

「天根君、好きです」
自分でもいつからなのかそうであったのかは定かではなかったが、彼という存在を知ってそんなに長くない。 『ずっと』と付けることができる程の時間があったなら、そう言いたかったと思った。

自分から告白して、つきあい初めてもうすぐ2ヶ月。
にとって良い返事を貰えたのは意外だったが、天根には特に気になる異性がいなかったから"来る者拒まず"だったんじゃないかと思う。 きっと去る者も追わないだろう。最初の1ヶ月はただ嬉しくて、舞い上がって。『天根』で毎日が成り立っていた。今もそうはそうなのだが、は不安で仕方がなかった。自分が胸を張って天根ヒカルの何処が好きだと言える自信がないから。 そして、天根が自分のことを好きでいてくれているのか全くわからないから。

「手、繋いでもいいかな」
そう言ったのはだった。天根は何も言わず、大きな手を、指をのそれに絡ませた。嬉しくて、ただ嬉しくて、笑顔になった。今、別にそれ以上の事をは望んでいる訳ではないのだが、気持ちが一方通行なのかもしれないと思い始めると2ヶ月間を振り返って自分達は手しかつないでいない、と思った。
お互い部活などで忙しいし、休日にデートなんてしなかった。帰り道、手を繋いで帰るだけ。お互いの家の中間地点で『ばいばい』。 天根とつきあってからはテニスのことも少し知ったが、何の話題だってからで天根は答えるだけ。たまに天根が出すダジャレには笑ったけれど、――――けれど。

がしっかり繋ぎとめておかなければ、天根はテニス部の仲間と、自分のことを忘れてしまうんじゃないか。
不安は大きくなるばかり。最初は彼の情報ひとつで嬉しかったというのに。気持ちを伝えたくなって、その返事が聞きたくて、いい返事がもらえて、そして・・・・
どんどんどんどん『天根』を求めている。なんて欲深いんだろう。
そう思った時、初めて彼と会うのが、帰ることが嫌だと思った。まだ部活中であろう彼の携帯に『ごめん、先に帰るね』と送った。 はわからない。天根の何処が好きなのかも、天根の気持ちも、自分が何をしたいのかも。




☆ ・ ゚ * . + 。 ・ ★




「今日も先に帰ったのか?」
着替えもせず、携帯の画面をじっと見て黙っているダビデ―――天根に、黒羽が聞いた。
「・・・・ん。さん、元気そうに振舞ってるけど、もしかしたら調子悪いのかも。」
「・・・・そっか。」

他人の恋愛にあまり口出しするもんじゃないというのはわかっているが、黒羽は心配でならなかった。 火曜日から水・木・金。もう4日間も連続で天根と彼女が一緒に帰っていない。それは今までを考えると妙なことだった。
黒羽は彼女と喋ったことなんてないのだが、面識はある。毎日、真っ暗になるまで行われる他のどの部活よりも帰りが遅くなる練習。 つきあいだしてから、彼女は毎日天根を待っていた。天根の姿を見た瞬間の彼女の嬉しそうな顔。笑顔。

に『可愛い』という言葉が似合うとガラにもなく思った。学年が違う黒羽であるけれど、一度、彼女が彼女の友達にからかわれている所を見たことがある。彼女は愛されている。

天根に聞けば、もうすぐ2ヶ月なんだそうな。未だお互いを天根君・さんと呼び合ってるらしい。2ヶ月ってそんなもんか?人それぞれだろうが、何かがひっかかっているような、もやもやした気持ちになっていた。




★ ・ 。+ . * ゚ ・ ☆




結局あれから4日間も避けてしまった。
不自然だろうか、不自然だよね。とは自問自答した。自分のこういう性格に吐きそうになった。

天根君に、どうしたんだろうって思って欲しいんだ 私。

馬鹿みたい と自嘲気味に呟いた。天根に先へ帰ると言いながら、は学校の近くの公園にいる。天根は通らない道なので、心配ない。

「・・・・・・あ。さん、こんばんわ」
「・・・!ぇ、えと、こんばんわ」
「あそこ、俺ん家。」

だが、テニス部員・・・しかも黒羽の家がこの公園の近くだということを知らなかったは、やってしまった!と自分の安易な考えを後悔する。の隣のブランコに黒羽は腰掛けた。

「調度良かった。話がしたかったんだ。・・・・聞いていいか?」
「・・・・何でしょう」
「ダビデのこと。どう、うまくいってんの?」
「ぇ、っと」
「ダビデはさ〜 中2のくせに180センチも身長があって、寒いダジャレとか言うし 俺らテニス部の中では静かな方でサ。 なんかジジィみてぇな奴だけど・・・やっぱ中2で。さんと何喋っていいかとかわかんねーんだって。すっげー緊張するって今日、言ってたぜ。 あとね、最近ダジャレのネタがいまいちだって、ネタ帳みて難しい顔してたり・・・笑って欲しいんだろうね。君に。」
「!・・・そ、そうですか」
「あ、悪いな。質問しといて。・・・で、どうなの?」
「・・・・どうって・・・・」

天根が自分のことをそんな風に?の頭の中は、黒羽の言葉だけで簡単にマイナス思考からプラス思考へと変わってゆく。 これもまた、自分は単純だなと思いながら、―――黒羽に言ってみようか。そう思ったのである。

「わ・・・たし、天根君の考えてることとか、わからなくて。天根君、わたしの彼氏、なのに、よくわからないんです。 色々考えてたら・・・・自分が天根君の何処が好きなのかとかも、疑問に思ってきちゃって。」

繋ぎとめておかないと、手を繋がないと、離れていってしまいそうで。
私が我が侭を言ったら、終わりになる気がして。
まだ2ヶ月なのに不安で。もう2ヶ月なのに不安で。

「・・・でも、もう多分、大丈夫です。天根君のこと、"何が"じゃなくて、全部好きなんだと思さんッッ」

月曜日からは、また今まで通りに帰ろう。
別に何処とはっきりしていなくても確かには天根のことが愛しいと、全部好きなんだと、自覚したその時。 天根が息を切らしながら自分の名前を叫んだ。驚いて目を丸くしたに黒羽が にかっと笑ってピース。

天根をメールで呼んだ男・黒羽は慌てる彼女―――を可愛いと思った。天根が羨ましい。後日、天根との呼び方が変わって、2人がイチゴパフェスーパーデラックスを食べに行くことを知って、黒羽のもやもやは完全になくなった。





(NOTバネさん夢) 070131wed